【浄土宗】知っておきたい葬儀の流れとマナー、お布施の相場は?
浄土宗は、法然上人(ほうねんしょうにん)を宗祖としています。阿弥陀仏の平等の慈悲を信じ、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と称えて、信者が人格を高め、社会のためにつくして浄土に生まれることを願います。お釈迦さまが説いたとされる「無量寿経(むりょうじゅきょう)」「観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)」「阿弥陀経(あみだきょう)」の三部経がよりどころです。
浄土宗の葬儀の流れ
◇枕経
息をひきとったあとは、故人の枕もとや周辺を整理し、安らかに眠れる浄域としてから弔問をうけるようにします。故人は北枕にすることが習わしです。これはお釈迦さまが入滅の時「頭北面西(ずほくめんさい)」になられ、その寂静にあやかるためと考えられています。
故人を送る準備ができたら菩薩寺の僧侶を呼び、枕経をあげてもらいます。枕経(まくらぎょう)とは、故人の枕もとで、この世を去り、浄土に往生するために読んでいただくお経です。
◇通夜
お通夜は、仏堂にこもってて法義を語りあったことから、故人のそばで夜通し守ることになったようです。生前の思い出を語り合い、死体をお護りしながら、夜通し線香をあげて偲び、静かに語りあって最期の別れを惜しむようにしましょう。
◇葬儀
浄土宗の葬儀は以下のような手順でとりおこなわれます。
- 1.入堂
導師、式衆が入堂します - 2.香偈(こうげ)
香をたき諸仏の降臨を願います - 3.三宝礼(さんぽうらい)
仏法僧に対して礼拝をします。 - 4.奉請(ぶじょう)
降臨した諸仏にお願いをします。 - 5.懺悔偈(さんげげ)
仏に生前の罪を懺悔します。 - 6.作梵(さぼん)
梵語の「四智讃(しちさん)」を唱えます。 - 7.引導下炬(いんどうあこ)
浄土宗の葬儀で最も大切な儀式です。2本の松明または線香を持ち、1本を捨て、残りの1本で円を描き、下炬引導文を述べた後、念仏を十篇唱えます。 - 8.開経偈(かいきょうげ)
教義の真義を会得することを願います。 - 9.読経
「四誓偈」か「仏心観文」の経文を読経します。 - 10.念仏一会(転座)
仏に救われた事を感謝し、数多くの念仏を唱えます。 - 11.総回向(そうえこう)
阿弥陀仏の功徳により往生を願います。 - 12.総願偈(そうがんげ)
仏道修行の四願を誓い往生を願います。 - 13.三身礼(さんじんらい)
阿弥陀仏への帰依を誓います。 - 14.送仏偈(そうぶつげ)
仏を送ります。 - 15.退堂
導師、式衆が退堂します。
浄土宗のお葬式の特徴的な部分は、引導下炬(いんどうあこ)と呼ばれる儀式です。
僧侶が棺の前でお焼香を行い、たいまつを意味する法具を2本、そのうちの1本を捨てるという所作を行います。この所作は煩悩にまみれたこの世を嫌い、離れるということを意味しており、もう1本はたいまつで円を書いて文面を読み、読み終えたらたいまつを捨てる動作を行います。それは極楽浄土に往生したいと心から祈願し、求めるという意味をあらわします。
僧侶は参列者と共にお念仏を唱えますが、この念仏一会という教えも浄土宗の葬儀のポイント。お念仏を唱えるのは、信仰心を深めるという意味合いと、参列者を阿弥陀仏と結びつける、縁を結ぶ意味を持っています。そして阿弥陀仏への帰依を誓い、仏様をお見送りしたのち、導師が退場することをもって、葬儀が終わります。
浄土宗における線香の作法
浄土宗の焼香には、特に回数の決まりはなく、額に押し頂いた後で香炉にくべます。 寺院によって違いはあるものの、1回もしくは2回程度が多いようです。
参列者の服装と香典
浄土宗の葬儀に参列するときの服装は、一般的な喪服と変わりません。男性は黒かグレーのダークスーツ。ネクタイ、靴下、靴は黒が正式です。ネクタイピンはしないようにしましょう。カフスは銀や真珠のものを使用します。女性は黒、グレーまたは濃紺の地味なワンピースやスーツ。バッグや靴は黒で、シンプルな物。光沢があるものや留め金がある派手なものは避けましょう。アクセサリーは、指輪は結婚指輪以外はいけません。もしする場合は真珠か光らない黒石にしてください。髪止めも、目立たない地味なものがよいですね。男女ともに、ハンカチも柄がないものにしましょう。
お香典の表書きは、葬儀の場合、御霊前、御香典、あるいは御香料のいずれかを使いましょう。
浄土宗葬儀のお布施の相場
浄土宗の僧侶にお布施を渡す場合、表書きは「御布施」とします。布施袋に「お経料」など「○○料」は商取引の支払いの意味になり、大変失礼であると考えられています。
ただし、車代や食事代を渡す際に「御車料」「御膳料(粗飯料)」「粗末料」「御菓子料」と書くのは失礼にあたりません。
お布施は通夜、または葬儀のあとに僧侶に挨拶をする際に渡すと良いですね。
浄土宗葬儀のまとめ
浄土宗では引導下炬(いんどうあこ)など、はじめて参列する方にはなじみのない習わしもありますが、どれも個人が仏様の救いを得られるよう願う大切な儀式です。故人のためにも、滞りなく葬儀をとりおこないましょう。
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通夜
納棺→通夜→通夜ぶるまい
家族葬の場合、参列者が身内のため、通夜や告別式の受付は用意しません。
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